11月26日から28日にかけて、道央地区未利用バイオマス供給協議会主催の研修会に参加しました。
石狩市森林組合のほか、大成建設株式会社さま、丸紅クリーンパワー株式会社さま、南空知森林組合さま、当別町森林組合さま、そらち森林組合さま、千歳市森林組合さま、北空知森林組合さま、石狩地域バイオマス発電株式会社さまが参加されました。
持続可能な森林経営と地域資源活用について先進的な取り組みを行う岡山県真庭市を訪問し、
「真庭SDGsバイオマスツアー」
森林資源の循環を軸とした地域づくりについて、現地の皆さまから多くの学びを得る機会となりました。

真庭バイオマス発電所
真庭バイオマス集積基地 第二工場


近隣の製材企業が中心となって設立した真庭木材事業協同組合が運営しているバイオマス材集積土場で、年間8万トンの原料材を扱っているということでした。ここで持ち込まれた原材料を加工しチップ化してバイオマス発電所に運んでいます。チッパー機と破砕機を組合わせて原材料に応じた使い分けがされているようでした。
真庭バイオマス発電所




発電所担当者さま の案内のもと施設内を視察し、発電システムや燃料調達の仕組みについて詳細な説明を受けました。
真庭バイオマス発電所は、発電規模10,000kW(一般家庭約22,000世帯分相当)の電力を供給できる発電所です。燃料に木質チップを用い、水を沸騰させ蒸気を生成、その蒸気でタービンを回転させ発電機を動かす方式を採用しています。
この発電所は地域の未利用木材を有効活用し、環境負荷を低減するだけでなく、山主への収益還元や地域経済の活性化にもつながる「持続可能な発電モデル」として機能しています。
真庭市役所本庁舎




真庭市役所では、木質チップボイラーとペレットボイラーを併設した冷暖房システムを見学しました。木質チップを主燃料としつつ、休日など管理が難しい時間帯には詰まりが起きにくいペレットを活用するなど、効率的で安定した運用が行われておりました。
また、真庭市林業バイオマス産業課様より「真庭市におけるバイオマス産業都市構想」について説明を受けました。
真庭市の取り組みは約30年前、林業・木材産業が低迷していた時期に、地域の若手経営者が課題解決のために立ち上がり、「21世紀の真庭塾」を通じてスタートしたものです。
その後、2001年に「木質資源活用産業クラスター構想」を策定し、林業と木材産業を中心に、副産物や未利用材まで余すことなく活用する循環型産業を確立してきたとのことでした。
真庭森林組合-月田総合集積場



真庭森林組合が運営する材集積場で、真庭森林組合長さま より、地域の森林管理やバイオマス供給体制に関する現状と課題について説明を受けました。
シカに加えてウサギによる食害も拡大しており、昨年度は約1,300頭のシカを駆除したにもかかわらず減少が見られないなど、獣害対策が重要課題となっているようです。
市役所への燃料チップ供給については、水分30%以下という厳しい条件を満たすため、樹皮を剥いだ木材の天然乾燥を行い、Webカメラによる残量監視で効率的な燃料供給を実現しているとのことでした。
銘建工業本社視察


同社担当者さま より会社概要および木質建材・バイオマス事業について説明を受け、事務所見学を行いました。
銘建工業は真庭市に製材と木材建築を中心とした産業基盤を持ち、約100年にわたり地域資源を活用した事業を展開しているとのことでした。
1970年代に集成材製造を開始、1990年代にはバイオマス発電に取り組み、2004年には木質ペレット製造を開始、2016年にはCLT工場が稼働を始めました。現在は約5000kWの発電設備で工場や事務所の電気を自社で賄っておられるのには驚きでした。
廃棄物を極力出さず、循環型の資源活用を徹底していることにより、SDGsの複数の目標達成に貢献していることがわかりました。
また、同社が携わった国内外の建築事例についても紹介を受け、2025年大阪・関西万博のリング構造物や日本政府館など、大規模プロジェクトに木質建材が採用されていることに驚かされました。北海道においても63件のCLT建築が存在し、交番や事務所、宿泊施設などさまざまな用途で普及が進んでいることを知り、地域間連携の可能性を感じました。
銘建工業の取り組みは、木材産業の高付加価値化、森林資源の循環利用、再生可能エネルギー活用など、多角的に地域に貢献しており、今後の木材産業の方向性を示す先進的なモデルであると実感しました。

真庭市の取組は単なる木材産業振興に留まらず、「地域の資源を地域で回す仕組み」を行政・企業・林業者が一体となって実践していることを実感しました。
森林資源を適切に利用し、エネルギー・雇用・観光まで連動させた包括的な地域再生モデルは、道央地域における未利用バイオマス利活用の推進にとっても極めて示唆に富むものと言いえ、今回得た知見を今後の事業推進に活かしていきたいと思います。
